りぼんの読書ノート

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国会議員基礎テスト(黒野伸一)

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国会議員の暴言、失言、不倫、不正など、適性を疑いたくなる事件が後を絶ちません。三権のうちで裁判官も役人も試験を通っているのに、国会議員には試験がないのはおかしくないかとの視点で書かれた作品です。

 

典型的なボンボン2世議員の黒部優太郎と、彼の政策秘書となった元官僚の橋本繁の対立から、物語が進んでいきます。橋本の陰謀でアホぶりやスキャンダルを暴かれた優太郎は議員辞職に追い込まれ、跡を継いだ補欠選挙で当選した橋本は、政治家にも資格試験を義務化する「国会議員基礎テスト」法案の立法に向けて邁進。

 

一方でただの失業者となった優太郎は、ブラック介護施設で働いたりする中でこの国の社会問題に初めて気づき、社会正義に目覚めて復活を決意。橋本との決戦に臨むのです。しかし本当の問題は、正義心も改革心も持たずに権力志向意識だけ強い政治家の存在ですね。既成政党の公認候補を含めた三つ巴の闘いが激烈になる中で、橋本はある決断をするのですが・・。

 

普通の女子大生から父親のコネで議員秘書になった若い女性を、第3の視点人物に配したことが効果的です。橋本と優太郎のどちらにつくべきか迷う彼女の心の揺れが、一般読者の視点に重なっているのでしょう。「国会議員の在り方に一石を投じる問題作」とのことですが、楽しい読み物に仕上がっています。

 

2019/7