りぼんの読書ノート

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三四郎はそれから門を出た(三浦しをん)

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直木賞を受賞してしまった三浦さんが語る「読書大好き少女?」の生態。前半は「ブックガイド」で、後半は「エッセイ」になっています。三四郎はそれから門を出た」という秀逸なタイトルは、三浦さんの造語ではなく、漱石の初期三部作を覚えるための受験生の暗記法だとのこと。ちょっとがっかり。

とにかく、小説も漫画も含めてこんなに本を愛する人がいるんですね。「本屋で買った本を家まで待ちきれず、道でよみはじめ、路上駐車の車に激突する」とか、「食事のメニューを考えるより先に、食事中に読むものを吟味する」なんてエピソードはすごすぎますが、その境地の一端を理解できてしまう私も、ちょっとヤバイかも・・。いや、これほどじゃありませんけどね。せいぜい「通勤電車の中で本を読みふけっていて朝から乗り過ごした」とか、「お出かけ前には持って行く本を吟味する」くらいの可愛い話です。

ただ、決定的な違いがあります。三浦さんは「本の応援家」なんですね。どの本のことも決して悪く書きません。自分で選んで紹介する本ですから、誉めるのは当然とも言えるのですが、どのレビューでも素直に感動しているんです。評論家じゃなくて「読者の視点」です。アマチュア読書家としては、もっと謙虚な姿勢で読まないといけないのかも・・。「映画評論家じゃなくって応援団だから、どの映画も決してけなさない」というおすぎの言葉を思い出してしまいました。

エッセイ部分も楽しいですよ。電車で隣の人が読んでいるカバーのかかった本をのぞき見して、文体や書体を手がかりにどの出版社の何という本なのか調べ始めるとか、「お洒落な家や収納の達人の家をテレビや雑誌で見るけど、本がない!」と憤ったり、「しおり」に関する感想を並べ立てるとか、まさに「本まみれ」です。もちろん、お得意の妄想部分もいっぱいです。

2009/6