りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ミュージック・ブレス・ユー(津村記久子)

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「音楽について考えることは、自分の人生について考えることよりずっと大事」な日々をおくっている高校3年生のアザミ。地方の進学校らしく、まわりは進路を決めつつあるのに髪は赤く染め、目にはメガネ、歯にはカラフルな矯正器。いつもイヤホンを耳に突っこんで、マイナーなアメリカン・パンクを聞いているアザミ。学校の中ではもちろん、バンドの仲間とだって音楽の話が合わないくらいだから、他人との距離感がわからなくて、いつも戸惑いながらの手探り状態。

でも、そんなアザミにも大切な友達はいます。優等生だけど正義感が強くて、いつでもすぐに行動に出てしまうチユキや、時々コアなメールをやり取りしている、イギリスのパンクファンのアニーや、卒業間際になって言葉を交わすようになった、ナツメやトノムラ。

音楽とは縁のない生活を送っている者としては、「音楽至上主義みたいな子どもの話はつきあいきれない」と思いながら読んでいたのですが、アザミの事情はちょっと違っていました。小学生の頃に医者と深刻な話があったといいますから、学習障害とか、アスペルガー症候群の疑いありとでも言われていたのでしょうか。アザミは「音楽の鎧」を身にまとうことによって、世界と向き合っているようなのです。

自分と他人との違いをゆっくり見つめて、上手には言えないけれど他人の気持ちを推し量って、集中力は続かないし、何かを決定することも難しいけど、アザミの生活は一生懸命なんですね。実はそういう時期って、程度の問題や発症の仕方は違っても、誰にでもあったと思うのです。私自身も・・。

2009/6