「恩田ファン以外の人は楽しめない」という作品が、最近とみに多い気がするのですが、本書もそんな一冊でしょうか。
失踪した男が、3つの塔と水路がある街のはずれの水無月橋で死体となって発見されます。「あなた」と呼ばれる人間が(後で女性とわかります)街を訪れ、男が殺害された理由を追求していくのですが、次第に明らかになってくるのは、この街が長年抱えていた秘密と事件の真相でした。
・・というストーリーなのですが、途中からリアリティが全くなくなってしまうのに、街の秘密も事件の真相も、それほど驚愕を与えてくれるものではなかったんですね。途中で挿入されている、なんの変哲もない街の写真も、何のためなのか理解不能。写真を使うなら、ゼーバルトや水村美苗さんの『本格小説』くらいの意図がないと・・。
『六番目の小夜子』などでは、やはり違和感を遺したままのエンディングであっても、少年少女たちの生き生きとした心理描写で読ませてくれたのですが、最近は彼女の良さが生きていない作品が多いように思われます。
2009/5