りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2013/4 フリーダム(ジョナサン・フランゼン)

後半は出張で不在となりますので、今月は22日までしかアップできません。ちょっと早いけれど、月間ベストを選んでしまいます。
1.フリーダム(ジョナサン・フランゼン)
一見幸せそうな普通の家庭が壊れていく・・。その根底にあるのは「自由」のなせる業なのでしょうか。「自由の国」アメリカで「自由」があちこちで衝突を起こしているように、不幸に至る誤った道の選択もまた「自由」なのでししょうか。それは、9.11テロ以降のアメリカがリベラルさを失って戦争へと進んでいった時期と符合しているかのようです。でも「自由」なくしては、幸福に至る道の選択もできないんです。

2.ブラックボックス(篠田節子)
先端技術を利用した「完全制御型植物工場」は、日本の農業に革命を起こす切り札的な存在なのでしょうか。かえって「食と環境の連鎖」を崩壊させてしまうことはないのでしょうか。新しい農業を目指す野菜生産者、サラダ工場、学校給食の現場で働く3人の同級生それぞれの現場で起きる問題が複雑に絡み合って、疑惑が生まれます。「植物工場」は農業の現状を打開するひとつの答えであっても、慎重さは必要なのです。

3.私小説 from left to right(水村美苗)
家族とともに12歳で渡米し、ボストンの大学院生として滞在20年目を向かえた「美苗」が、ニューヨークに住む姉「奈苗」との長電話で、異国に住む孤独を語り合います。そこにあるのは、成長期にあった姉妹が異国で感じた違和感だけではありません。本書の主題は、彼女たちにとって日本は帰るべき国と呼べるのかということであり、本書で描かれるのは「ひとりの日本語作家」が誕生するまでの過程なのでしょう。

【次点】
続明暗(水村美苗)


2013/4/22