りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

Q&A(恩田陸)

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2002年2月11日午後2時過ぎ、都内郊外の大型商業施設において発生した重大死傷事故の原因は何だったのでしょう。関係者がインタビュアーの質問に答える「Q&A」だけで進行する物語ですが、単なる謎解きではありません。不思議な世界に着地していくのが「恩田ワールド」です。

質問者が何者なのかは不明なものの、事件を報道した新聞記者、事件の発端らしき現場を目撃した主婦や元技術者へのインタビューは、事件の真相が「原因なき集団パニック」ではないかと思わせます。しかし事件を免れたもののコーチからセクハラを受けているらしい女子小学生や、恨んでいた相手の死亡現場を監視ビデオで見てしまった弁護士や、奇跡的に無傷だった少女の母親へのインタビューあたりから、事故が独り歩きを始めたことがうかがわれます。

次いで、当日出動した消防士や、事故現場ツアーを行っている大学生や、近所のタクシー運転手へのインタビューからは、この事件の背後に潜んでいる陰謀性が浮かび上がってくるようなのです。

しかし、それら全てを背負い投げで飛ばしてしまったのが、最終章の「奇跡の少女」へのインタビューです。事件からすでに数年が経過して、その少女は宗教団体の教祖として祀り上げられているというのです。そして分裂の危機を迎えた教団で、少女はどちらにつくかを迫られているというのですが・・。

本書はついに、タイムトラベルとかパラレルワールドの世界に入り込んでしまいました。このような、破天荒で無責任な着地ブリが、著者の魅力でもあるのです。いや、褒めているんですよ、

2017/11