りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

三月の招待状(角田光代)

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最後まで違和感を覚えた本でした。

友人の離婚パーティで顔を合わせた、学生時代の友人同士であった5人の男女。離婚パーティの当事者である、浮気な夫・正道と、彼にずっと振り回されていた裕美子。ライターとして成功しつつあるが、年下でグータラな同棲相手の男性に不満を持つ充留。そして学生時代から地味だったけれど、今は専業主婦として落ち着いている麻美。学生時代に小説家として派手なデビューを果たしたのに、今はくすぶっている宇田男。

この5人とも、30代半ばを迎えようとしているのに、学生時代の気分が抜けていない。ただ皆で集まって「わちゃわちゃ」と騒いでいたいだけで、社会性がないんです。かといって、この5人が信頼し合っているわけでもなく、互いに見下していたり、嫉妬したり、要は「群れている」だけの関係。

離婚したカップルは他人になりきれず、同棲中の充留も専業主婦の麻美も、現在の相手に不満なこともあって、かつて学生時代に輝いていた宇田男と関係してしまう。また、この宇田男が最低野郎なんです。「自然体」というと聞こえはいいけど、生活もその日暮らしで、女性との関係だって構築できない。というより、ただ「寝る」だけで、「関係」の意味すら理解できてない。

宇田男との関係がきっかけとなって、充留はヒモのような同性愛手との結婚を決め、麻美は夫の元に戻るということのようですが、それだって心から納得したからでもない。最後まで、後味の悪い作品でした。ひょっとして、作家などの自由業者にはこういう人種が実際に多いのでしょうか?

2009/4