りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

虹色天気雨(大島真寿美)

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『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』で直木賞を受賞した著者のメジャーデビュー作は『ピエタ』だと、ずっと誤解していました。先月読んで読後感が良かった『チョコリエッタ』の主人公は少女ですが、こちらはもう30代後半の女性たちが主人公の作品です。

 

市子、奈津、マリの3人は、色々な紆余曲折があったものの、中学・高校から20年来の付き合いを続けています。ライターか評論家と思しき市子は深い恋愛経験はあったものの独身を通しています。モデルだった奈津は結婚して専業主婦となり、一人娘の美月はもう小学生。エネルギッシュで今でもバイクを乗り回しているまりは空間デザイナーで、年下のカメラマンと恋愛中。

 

早朝に突然、市子に奈津からかかってきた電話から物語が始まります。突然家出をしてしまった夫・憲吾を探しに行くので、娘の美月を預かって欲しいというのです。どうやら美月は何か知っているようなのですが、まさか3人の共通の知り合いで、女性ホルモンたっぷりで、結婚や離婚を繰り返している女性・房恵が絡んでいるのでしょうか。実情は想像の斜め上にあって、房恵は別の絡み方をしており、憲吾にはもっと中途半端で無鉄砲な理由があったのですが・・。

 

夫不在の中で、3人の女性と友人たちが揃って美月の運動会を観戦に行く場面が印象的です。憲吾はもちろん、市子やまりがつきあっていた男たちも、仕事や何やらで関係がある男たちも皆、影が薄いか変人なのです。頼りになるのはゲイの三宅ちゃんだけ。男なんていてもいなくても、変わらずに長く続く女性同士の友情が、本書には描かれているのです。解説の北上次郎氏によると、この手の女性友情小説の嚆矢は『女たちのジハード(篠田節子)』であり、そんなに昔のことではないというのですが、どうなのでしょう。

 

2021/2