りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

潜行(スチュアート・ウッズ)

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警察署長で有名なウッズによる本格スパイ小説です。冷戦時代の物語ですが、一人の野心家によってソ連軍が動かされ、全世界を震撼させる戦争が準備されるという設定は、古くて新しいテーマです。現代の私たちは、民主主義国家を標榜する超大国が、大統領によって戦争を突き進めた例を知ってしまいましたので・・。

CIAソヴィエト分析課課長キャサリン・ルールが、ソ連で異彩を放つマジョロフによって密かに準備された陰謀に挑みます。アンドロポフの後を継ぐと思われていたマジョロフが、数年前から姿を消していた理由。スウェーデンに異常接近を繰り返すソ連の潜水艦、スウェーデン語の履修者が急に増えた事実。リトアニアに建設された秘密基地、そこに頻繁に招待されるようになったコンピュータ専門家。

キャサリンは、パズルを組み合わせようとしている最中に、なぜか仕事を外されてしまいます。CIA内部にも、マジョロフの手先が潜入している恐れがあったようです。一方でソ連の潜水艦艦長ヘルダーは奇妙な指令を受け取り、マジョロフがたくらんでいることの恐ろしさに気づくのですが・・。

入念に準備されたマジョロフの陰謀に対して、CIA側は数々の偶然に助けられすぎですけれど、「正義の味方」には陰謀は似合わない。「神の助け」があったのだと思いましょう。ともあれ、誰が味方で、誰が敵なのかわからない状況はうまく書けていますし、最後まで一気に読ませてくれます。

『警察署長』のリー一族の孫にあたるウィルが、キャサリンの恋人として登場します。やっぱり彼の一族は、政治を目指すのですね。

2009/4