りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

愛憎の王冠 - ブーリン家の姉妹2(フィリッパ・グレゴリー)

イメージ 1

「ブーリン家の姉妹2」と副題がついていますが、これは商業的な意味合いでしょう。本書は、メアリーとエリザベスによる、ヘンリー8世亡き後の女王争いが扱われます。彼女らも姉妹ですけど、チューダー家の異母姉妹ですから、このタイトルは変ですね。メアリーの母はスペイン皇女キャサリンで、エリザベスの母がアン・ブーリン

著者が本書の語り手として造形したのは奇妙な人物。スペインの異端審問所の手を逃れてイングランドにたどり着いた改宗ユダヤ教徒の娘で、予言能力を持つ少女ハンナ。彼女は、後にエリザベスの側近となるロバート・ダドリーに見出され、王位継承権を持つメアリーのもとへ「聖なる道化」として、実はスパイとして送り込まれます。

しかしハンナは、ダドリー一族の陰謀を前にして、凛として国民の前に立つ王女メアリーに魅了され、誠意を持って彼女に仕えてしまいます。それはハンナにとって危うい道でした。異母妹エリザベスに和解の手を差し伸べ、ハンナを信頼できる友として遇すなど、寛容なメアリーが唯一譲れないものが、母から受け継いだカトリック信仰だったのですから。女王となったメアリーはスペイン王子のフェリペと結婚。イングランドに異端者審問をもたらします。ハンナのもとへも残虐な異端者狩りの手が・・。

最近の映画と異なり、エリザベスは不実で好色な王女として描かれます。有力な男どもを誘い、メアリーに対する陰謀を巡らせながら保身を得意とする狡猾な王女。しかし彼女は、宗教には寛容なプロテスタントを象徴する存在なのです。ハンナの忠誠心は、2人の間で揺れ動かざるを得ません。

後継ぎを産めず、夫フェリペからも見放されて、絶望の中で死の床についたメアリーは、エリザベスを王位継承者と指名するための条件をつけます。カトリックに改宗せよと。もちろんエリザベスはしゃあしゃあと「イエス」と答え、もちろんそれは嘘なのですが、その能力を持って判定役とされたハンナの、メアリーへの答えは?

この時代のイングランドの宮廷物語は、ドロドロとしていておもしろい。次は、女王の座についたエリザベスと、スコットランド女王メアリーとの確執でしょうか。続編も楽しみです。

2009/12


アン・ブーリンとメアリー・ブーリンの物語はこちら】
ブーリン家の姉妹