りぼんの読書ノート

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ジョナサン・ストレンジとミスター・ノレル1(スザンナ・クラーク)

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著者のスザンナさんは1959年生まれといいますから、『ハリー・ポッター・シリーズ』のJ・K・ローリングさんより6歳年上ですが、ほぼ同年代の方ですね。オクスフォード大学を卒業した後、出版関係の仕事をしながら10年かけて本書を書き上げたそうです。女性がコツコツ書き上げるというのが、現代イギリス魔法ファンタジーのパターンでしょうか。

そう。本書も魔法の本なのです。ただし『ハリポタ』とは異なって魔術師は普通の人間であり、現実の世界の中で生きている。とはいえ本書の中での「現実の歴史」とは、13世紀から15世紀にかけてイギリス北部は大魔術師であった「大烏の王」に治められたとなっているので、パラレル・ワールドかも。

1806年。ネルソン提督亡き後のイギリス軍が、ナポレオンに苦戦を強いられている時に、1人の魔術師が登場します。イギリス魔術は既に衰退しており、実際には魔術を使えない「理論魔術師」や「文献魔術師」だけがはびこる中で、たった1人の「実戦魔術師」として名乗りをあげたノレル氏は、長年自宅で研究した結果、魔術を使えるようになったんですね。

「国家のために役に立ちたい」とのノレル氏の希望は叶ってイギリス政界でも認められ、雨で作った艦隊でフランス海軍を港に足止めさせるなどの軍功をあげますが、彼が一度だけ使った「死者を蘇らせる魔術」のせいで、異界が人間界に忍び寄ってきます。

第一部は、後にノレル氏の弟子となる若いジョナサンが予言を聞く場面で終了するのですが、実はここまでのところは、あまり面白くない。その大きな理由は、ノレル氏のキャラクター。自分以外の魔術師を排除して「オンリーワン」の存在として名誉を独り占めしたいという、セコキャラなんですから。『ハリポタ』よりは少々深みのある世界のようですが、あの明るさには遠く及びません。第二部以降、若いジョナサンの活躍で物語が動き出してくれることに期待です。

2009/2