りぼんの読書ノート

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エコエコアザラク(岩井志麻子)

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「黒木ミサ」という女性が唱える「エコエコアザラク」という呪文・・なんとなく聞いたことがある話です。もともとは1975年から79年まで連載された古賀新一氏にによるホラー漫画であり、その後も何度か映画化・ドラマ化されているので、聞いたことがあったのでしょう。本書は、黒木ミサを主人公として書下ろされた作品です。

 

常にセーラー服を着ている年齢不詳の美少女の主人公はどうやら、魔術師として奥義を極めた両親に生贄にされながら、魔女として生まれ変わった女性のようです。ある時は謎の占い師、またある時は不思議な事件の当事者となったりするものの、基本的には魔術を極めることだけが目的であり、現実世界の出来事に関しては傍観者なのでしょう。彼女には正義も悪も関係ないのですから。

 

現実から目を背けて生きてきた「逃げる女」の転落劇がたどり着く先はどこなのか。有名な親からの才能を受け継げなかった「さまよう夫婦」は、なぜ謎の女性の記憶を共有しているのか。次々と男を喰らいながら義理の息子の部屋に「居すわる母」の正体な何なのか。失踪した母を持つ女性を「追いかけてくる愛人」とは何者なのか。どれも真相を知るとゾッとする物語なのですが、一番怖いのは真相を知りながら曖昧なヒントだけ与えて傍観している黒木ミサでしょう。まるで因果の外にいる存在のようです。

 

この種の作品がオリジナルを上回ることは難しいのですが、さすがに『ぼっけえ、きょうてえ』のch社だけのことはあります。最近ではTVのバラエティでシモネタを言い放っていたおばさんという印象すら、薄れてきているのですが。

 

2020/12