りぼんの読書ノート

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フェルメールの街(櫻部由美子)

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17世紀のオランダ。画家修業を終えて故郷デルフトに帰ってきた20歳のフェルメールは、宿屋兼居酒屋の実家を手伝いながら、レンブラントの高弟であるファブリティウスの助手を勤めはじめたところ。後に「光の魔術師」と呼ばれるフェルメールですが、まだ光の描き方に苦心惨憺しています。

そんな彼が娼館で出会ったあどけない表情を漂わせながらも蓮っ葉な少女・カタリーナに恋をしてしまいます。後に微生物学の父と呼ばれ、フェルメールの死後に遺産管財人となる友人のレニーは、いわくつきの女性との恋をあきらめさせようとするのですが、かえって逆効果となって2人は結婚。

その頃デルフトでは、陶工らが行方不明になるという不思議な事件が起こっていました。なぜか不味くなったビール、安く出回り始めた高価な中国製の磁器、フランスから舞い戻ってきたカタリーナのダメ兄貴と繋ぎ合わせると、何となく事件の真相も見えてくるのですが、犯人は、悲惨だったレニーの少年時代とも関わっていた意外な人物だったのです。そして1654年のデルフト大火が起こるのですが

そんなミステリ仕立ての事件や、カタリーナの異常なふるまいの裏に隠された事情や、ファブリティウスの工房で働くオハナという少女の出身や、青いターバンを巻いた踊り子の正体や、、親友レニーの結婚話や、1654年のデルフト大火の原因などが明かされていくストーリーは、盛りだくさん。しかし本書の一番の魅力はフェルメールが生きた17世紀のデルフトの雰囲気を、生き生きと描きだしたことでしょう。

「デルフト眺望」、「窓辺で手紙を読む女(カタリーナ)」、「天文学者(レニー)」、「牛乳を注ぐ女(レニーの妻となるバーブラ)」、「真珠の耳飾りの少女(謎の踊り子)」などの誕生場面が、ところどころに挿入されているのも楽しい仕掛けです。カッコ内は、本書においてモデルとされた人物です。

2018/3