りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

わが愛しき娘たちよ(コニー・ウィリス)

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年末から年始にかけてずっと忙しく、4日間でこれ一冊だけ。でも、箱根駅伝も結構見てたりして・・(笑)。


本書は、1985年に出版された著者最初の短編集。表題作「わが愛しき娘たちよ」は、山田和子さんの解説によると、出版当時に相当の論議を呼んだ作品のようです。養育費を出しさえすれば「プラスチックバッグ・ベイビー」として自分の子どもを送り出せるようになった未来社会の少女の独白という形式を取りながら、ヴィクトリア朝時代の詩人ブラウニングの駆け落ち事件が題材。テーマはズバリ、性と権力の構図と欺瞞性。後の「女王様でも」(最後のウィネベーゴ)にも通じるフェミニズムの香りが漂う名作と思うのですが、ちょっと怖い。

他の作品も、簡単に紹介しておきます。

見張り:大空襲下のロンドンへとタイムトラベルした歴史学生が学ぶべきだったことは・・。オクスフォード大学史学部によるタイムトラベルものの最初の作品でしょうか。ダンワージィ教授や、10年後に発表されるドゥームズデイ・ブックで、ペスト禍に襲われた中世へとトラベルしたキブリンまでもが既に登場しています。本書の中で一番好きな作品でした。

埋葬式:自分の葬式に現れたエリオット。彼と不倫していたアンが見た正体は・・?

失われ、見出されしもの:聖杯が見つかった? 世界の終わりは思わぬ形で訪れる?

花嫁の父:ねむり姫と共に目覚めた父王だったが、時代の変化についていけずに・・。

クリアリー家からの手紙:遅配された手紙に隠された真実は・・世界に何が起きたのか?

遠路はるばる皆既日食を見るためにモンタナに集まった人々の中に奇妙なメンバーが・・。

鏡の中のシドン:人の思考や特技を写し取るミラー族のルビィは誰を写し取ったのか・・。

デイジー、日だまりの中で:太陽が膨張して地球がのみこまれてしまう日が訪れるのか?

通販クローン:通販で送られてきたクローンは詐偽なのか、それとも・・。

サマリア人:手話で会話ができるオランウータンのエサウは洗礼を受けたがったのか?

月がとっても青いからオゾン層再生のため宇宙に撒かれた物質に弊害はあるのか?なぜか生成言語(むちゃくちゃな造語)が絡んでくるコミカルな作品です。

各短編についている、作者自身による前説も楽しめる短編集です。

2009/1