運命の恋人マリスと出会って、ウィーンに移り住んだウォーカーの周辺で不思議な出来事が次々と起こります。30年以上前に死んだ男の墓に彫られた、自分そっくりの肖像。「ここにたどり着くまでずいぶんかかったね」と声をかけてきた見知らぬ老婆。自分のことを、わけのわからない名前で呼ぶ、自転車に乗った小男。やがて、知人が不慮の死を遂げ始めると、もはや「不思議」では済まされない。
彼が迷い込むのは「本当は怖いグリム童話」の悪夢の世界。魔法、本当の名前、本当の父親、父親の呪い、そして、そもそもの始まりは・・。極めて危険な存在である彼の父親もまた、悲しい男だったというのがいいですね。思いもよらない決着のつけ方と、赤ずきんが登場するエンディングまで一気です。
2009/1