りぼんの読書ノート

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神話がわたしたちに語ること(カレン・アームストロング)

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角川書店から刊行されている「新・世界の神話」シリーズの第一弾は小説ではなく、神話の持つ意味を現代に問いかける「神話・宗教論」でした。

「人間は常に神話を生み出してきた」という言葉で始まる本書は、神話シリーズのガイドという役割を持っているのでしょう。いかにして神話というものが生まれ、語り継がれてきたか。神話が単なるおとぎ話でなく、人間にとってかけがえのないものであるかを論じるのです。

旧石器時代の狩人たちが感じた死の恐怖や、手の届かない天空に感じたであろうアミニズムが、農耕のはじまりとともに、大地の神と融合されたり、放逐されたりしながら変質していきます。さらに文明の始まりとともに、神話の主役は人間となっていく。確かにそのような類型化が可能なのでしょう。神話の歴史とは、人間性の歴史なのですね。

中世において、神話は宗教によって駆逐されました。そして現代、科学によって、宗教も神話も一緒くたに失墜してしまった時代において、神話がどのような意味を持ちえるのでしょう。著者はいろいろ語ってくれていますが、私の理解で言い直すと「人間性の再発見」とでもいうことなのでしょうか。それだと少々簡潔に言い切りすぎか。

このシリーズでは既に、ジャネット・ウィンターソンによる「再構成アトラス神話」永遠を背負う男を読みました。次はマーガレット・アトウッドの「裏イリアド」ペネロピアドを読んでみようと思います。

2008/11