りぼんの読書ノート

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ブルー・ヘブン(C・J・ボックス)

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心優しいワイオミング州猟区管理官、ジョー・ピケットを主人公とする、「自然保護ミステリ」のシリーズを書き続けている著者ですが、本書はこのシリーズとは別で、カナダ国境にもほど近い北部アイダホを舞台にした本格サスペンス。

広大な森林や牧場の残るこの地域は、「ブルー・ヘブン」とも呼ばれていて、大都会での生活から引退した人々に人気のエリアだそうですが、本書のように犯罪まで持ち込まれては困りますね。12歳のアリスと弟のウィリアムは、人里はなれた森で殺人事件を目撃してしまいます。犯人は「ブルー・ヘブン」で引退後の生活を静かにおくっているはずの、元ロサンジェルス市警の4人の退職警官。追跡を逃れた姉弟に対し、4人組は犯罪捜査のプロという立場を利用して保安官への協力を装って誘拐事件を仕立て上げ、捜索の全ての指揮を掌握してしまいます。もちろん目的は姉弟の口封じ。

絶体絶命の姉弟が逃げ込んだ先は、人手に渡る寸前の寂れた牧場。怯える子どもたちを信じた老牧場主は、町のほぼ全てを相手にする闘いを決意するのですが、そこに現れた思わぬ援軍は、かつてロサンジェルスで起きて迷宮入りした現金強奪事件を追う退職刑事と、マネー・ロンダリングに手を貸してしまったことを悔やむ、地元の老銀行家。やがて、全てのピースがひとつに纏まって、事件の全貌が見えてくるのですが・・。

文庫で550ページ近い長編ですが、飛行機の中で一気読みしてしまいました。とにかく、おもしろいのです。もちろん底流には「自然に対する愛着」が満ちています。映画化の計画もあるようですが、老牧場主はクリント・イーストウッドに演じて欲しいですね。

2008/11 シンガポールに向かう機内で


【C・J・ボックスさんの著書】3冊とも野口百合子さん訳(講談社文庫)
沈黙の森
凍れる森
神の獲物