りぼんの読書ノート

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アフガンの男(フレデリック・フォーサイス)

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逮捕劇のさなかに自殺したアルカイダ幹部のパソコンに残された、「アル・イスラ」という作戦名。コーランで最重要とされている、教祖モハメッドの「夢の旅」を意味するコード名のついた作戦は、恐るべき規模のテロであろうと予測されたのですが、詳細は一切不明。

『神の拳』で湾岸戦争の際にバグダッドに潜入した元SAS将校のマイク・マーティンに白羽の矢が立ち、マイクはアメリカで収容されているタリバン戦士のイズマート・ハーンに成り代わってアルカイダへの潜入捜査を開始します。マイクとイズマートは、旧ソ連のアフガン侵攻の際にはともに戦った仲間であったのですが・・。

アフガニスタン現代史の解説はわかりやすいですし、アルカイダ・テロリストたちの思想や発想も丁寧に説明されています。大規模テロの手段も斬新であり、こんな手法を公開していいのかとすら思わせますし、テロ計画を準備して実行していく過程は、往年の『悪魔の選択』や『第四の核』を彷彿とさせてくれます。

でも、フォーサイスさんの新作としては、物足りなさを感じてしまいます。たぶん過去の物語はともかくとして、現在の物語の進展のなかでのイズマートとマイクの絡みがうまく織り込まれていなかったからなのかもしれません。

『神の拳』ではフセイン政権の革命評議会メンバーのキャラクターが描かれていたのに対して、本作ではアルカイダのメンバーが描かれていないという指摘もありますが、それは現代のテロが匿名性を重要な要素としているからなのでしょうか。フォーサイスさんの力量を持ってしても、現代のテロを「魅力的に」描くことなどは難しい時代になってしまったようです。

2008/8/25読了