りぼんの読書ノート

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クラウド・テロリスト(ブライアン・フリーマントル)

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1936年生まれのスパイ小説の大家が2015年に書き上げた新作は、サイバー空間に潜むテロリストという新しいテーマに挑戦しています。

米国NSA局員で暗号解読専門家のアーヴィングが立ち上げたプロジェクトは、テロリストたちが連絡に用いているSNSに入り込み、対立するグループ間の抗争を煽るというものでした。しかしいったんは監視下に置いたものの逃亡した者こそが、アルカイダ系の首魁的人物だったのです。その矢先に世界各地で発生した同時多発テロの予兆に気付き、被害を最小限に食い止めた英国MI5のアナリスト・サリーは、CIAやNSAと協力すべく米国に呼ばれるのですが・・。

新時代のスパイ小説という意気込みは感じられるのですが、小説の大半は米英各機関の縄張り争いと責任の押し付け合いという内輪もめに費やされており、肝心のテロリスト追跡劇は冴えません。もっとも諜報機関の現実もそのようなものかもしれませんね。各国や各諜報機関が密接に連携して国際テロに対峙するという図式には程遠いものなのでしょう。北朝鮮の核問題への対応や、イスラム国やエルサレム問題への対応をニュースで見ているだけでも、そのあたりの雰囲気は感じられます。

著者が描きたかったものもそのあたりのゴタゴタなのかもしれませんが、とても爽快な読後感とはいかないのです。

2018/1