りぼんの読書ノート

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ゾロ 伝説の始まり(イサベル・アジェンデ)

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モダン・マジックリアリズムの傑作である『精霊たちの家』の著者による「ゾロ」ですが、古くからきっちりしたプロットができている作品ですから、相棒ベルナルド、愛馬トルネード、最愛のロリータ、悪役ラモンなどの大きな枠組みは崩せないようです。でも、著者らしい仕掛けもたくさんありましたよ。

まずはゾロの生い立ち。スペインの圧制に苦しむインディオを助ける正義の味方となるゾロは、混血だったとの設定。オオカミの生まれ変わりとしてインディアンを率い、スペイン人の集落を襲撃していた人物が実は女性で、彼女を打ち破ったスペイン軍人と恋に落ちて生まれたのが、後にゾロとなるディエゴだったのです。

父親からはフェンシングを、母と「白いふくろう」と呼ばれるまじない師である母方の祖母からは先住民族の生き方を学んだディエゴでしたが、祖母による通過儀式の際、一匹のキツネ(ゾロ)に出会い、そのキツネこそが彼の魂の師であると、祖母から告げられるという経験をします。先住民族の伝承を、ゾロ伝説に重ね合わせるあたりが、マジックリアリズム的ですね。

やがて、乳母の息子で兄弟同様に育ったベルナルドとともに、ナポレオン占領下のバルセロナに留学したディエゴは、剣の師や、仇敵となる傲慢な貴族の青年や、初恋相手となる女性らと出会い、後にゾロを特徴づけることになる性格や能力を身に着けていくことになります。やがて、カリフォルニアの父のもとに戻ったディエゴを待ち受けていたのは、荒れ果てた村と、酷使されるインディオたちでした・・。この後は、昔からのゾロ・ファンであればご存知の物語。

本書の語り手となるイサベルという女性は、もちろん作者自身の分身でしょう。ゾロの初恋相手でもなく、結婚することもないのですが、ゾロとは長年にわたっていい関係を気づくことになるようですから、ここで描かれているゾロは、作者の理想の男性なのかもしれません。^^

2008/5