りぼんの読書ノート

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第三の魔弾(レオ・ペルッツ)

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「幻想歴史小説の先駆者」である著者の作品を、一気読みしています。今月3冊目となる本書の舞台は、16世紀のアステカ王国。征服者コルテスが率いるスペインの無敵軍に立ち向かったドイツ人の物語。

神聖ローマ帝国を追放された「ラインの暴れ伯爵」グルムバッハは新大陸に渡り、アステカ王国インディオたちに味方するものの、スペイン軍の圧倒的な武力の前にはなすすべがありません。すでに失っていた左目をカタにして悪魔を騙し、コルテス軍の狙撃兵ノバロの百発百中の銃を手に入れたものの、その銃には呪いがかけられてしまいます、「1発目はお前の異教の国王に。2発目は地獄の女に。そして三発目はお前自身に。」

この種の物語の常として、「いかにして、予想を裏切る形で予言を成就させるか」がキーになるのですが、本書もそこを裏切ることはしません。なぜグルムバッハが「異教の国王」と「地獄の女」を撃つことになったのか。そして「お前自身」とは何のことなのか。冒頭に登場する「記憶を失った、義眼の片目を持つハンガリー騎兵隊の大尉」とは誰なのか。かなり残酷な物語なのです。グルムバッハの異母兄弟で、少年のような美貌を持ちながら、「関わった女性が全て娼婦になってしまう」サディストのメンドーサ公も、存在感あり。

ところで大航海時代は、ほとんどそのまま宗教戦争の時代と重なっています。新大陸から収奪した富をもとにして、ヨーロッパで反宗教改革勢力の中心となったスペインに対して、ドイツ・オランダ・イギリスなどの新教国がインディオの味方をしたくなるのは理解できます。もっとも彼らも、自分が征服者・植民者となれる機会は、決して逃さなかったのですが・・。

2016/4