りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

夜に目醒めよ(梁石日)

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ガクとテツという、民族学校出身の若者2人のエネルギッシュな生き方が衝撃的な本。『カオス(未読です)』という小説の続編だそうですが、これだけでも成立しています。

夜の六本木で派手な商売と抗争を繰り広げた2人は、最後にはニューヨークの裏社会へも飛び出していくのですが、作者は本書について、次のようなことを言っています。「在日コリアンも3世4世になると日本の若者とほとんど変わらない。しかし潜在意識にはナショナル・アイデンティティを持ち感性や生き方は日本の若者と違う。それは日本の若者にとってもある種の刺激的要素になり得ると思う」。

「夜はすなわち闇の世界。闇の一方には必ず光がある。光の中に生きる者に闇の中の人間は見えないけれど、闇の中からは光の中にいる者の姿がよく見える。その意味で、闇の世界の住人は光の世界の住人を意識化しているんです」。

「人間の内面の本当のところは誰にもわからない。本人にさえわからないかも知れない。それを小説は書いていくわけです。エッセイやドキュメントでは書けない、ジャーナリズムが調べ尽くしてもわからない、事実の先にある闇の世界に踏み込んでいって『虚構の真実』を構築していく。フィクションであるけれどもそこに真実がある。それが小説というものではないかと思います。また、そうでなければ小説を書く必要はないんです」。

自暴自棄に繋がりかねないバイオレンスには引いてしまうけれど、日本の伝統的な義侠心やマネーオンリーのドライな世界とも異なっている在日コリアンの義侠心が、軽々と国境をも越えていくさまは、ある意味痛快。こちらのほうが「世界標準」なのかもしれません。2人に連れそう絶世の美女(実はオカマ)のタマゴがユニークな存在です。^^

2008/5