りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

Re-born はじまりの一歩

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7人の作家による、「再生」をテーマにしたアンソロジー。もちろんどれも短編ですから、どうも映画の予告編を連続して見ているような印象でものたりなさが残るのですが、まだ1冊しか単行本を出していない宮下さんの作品が読めるというので手を出してみました。タイトルも「リボーン」ですしね。^^

宮下奈都「よろこびの歌」
音大附属の受験に失敗し、滑り止めで入った高校で無為の日々をすごしている主人公が、自分を応援してくれる歌声を耳にして、はじめて音楽の喜びを感じます。この人の描く若い女性の感性は、本当にみずみずしいですね。

福田栄一「あの日の二十メートル」
老人から水泳指導を請われた主人公は、老人が20mを泳げるようになりたい理由を聞いて協力するのですが・・。こういう話に人の生死をもってくるのは違反じゃないかなぁ。

瀬尾まいこゴーストライター
店も継がずに上京してしまう兄に対して、ラブレターの代筆を頼まれた主人公(弟)が、要領いいだけの人間と思っていた兄の悩みに気づきます。長編「戸村飯店青春100連発」の第一章となる作品だそうです。

中島京子「コワリョーフの鼻」
「数百年後には人類から鼻がとれる?」という他愛ない話題がゴーゴリの「鼻」と繋がり、さらには主人公が夫に対してずっと隠していた、ある秘密と繋がっていきます。うまい!

平山瑞穂「会ったことがない女」
死ぬ前に、50年前にある女性に起きた奇妙なできごとの真偽を確認したいと願う老人が、当時の女性の孫娘と出会うのですが、それが、新進の舞台女優である孫娘にとって転機となっていきます。奇妙なできごとの謎は解かれないのですが・・。

豊島ミホ「瞬間、金色」
親友が子どもを生んだ日、中高時代に壮絶な苛めに合った日々を思い出す2人。過去と現在の対比が鮮明ですが、こういうテーマはすでに多くの人が書いていますので、新鮮味はありません。

伊坂幸太郎「残り全部バケーション」
家族解散の日、秘密を暴露しあう父・母・娘が、友人を求めるという不思議なメイルを受け取るのですが、メイルの差出人もまた、新しい出発を求めていたのです。長編であれば、もっとヒネリが効いていくのかも。

2008/5