りぼんの読書ノート

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キューバ・コネクション(アルナルド・コレア)

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著者はなんと、カストロも絶賛したという、キューバのミステリー作家。

ソ連崩壊後、ソ連からの援助に頼っていた経済も崩壊してしまったキューバからは、粗末なボートでアメリカに向けて亡命する難民が増大していますが、長年スパイとして祖国のために尽くしてきたカルロスは、久々に帰国して再会した子供たちすら、キューバに見切りをつけて国外脱出しようとしているのを見て唖然とします。

迫り来る嵐の中、すでに父親からは心の離れてしまった子供たちを救出するために、カルロスもまた荒海に乗り出します。ようやくアメリカにたどり着いたものの、彼を仇敵と狙うCIAの目を引いてしまうことに。

「わが子の命を救って親子の絆を取り戻すべく、戦いに向かう老境の男の誇り」というテーマには、国の違いなど関係ないですね。ヘミングウェイを思わせる力強い文体で語られるスパイミステリーは、読み応えありました。

アメリカのキューバ政策や、フロリダのキューバ人社会の実態も触れられます。キューバに対する経済封鎖を解いてキューバを経済的に取り込んでしまおうとするいわば「太陽政策」の実現を阻んでいるのは、両国の対立から既得権益を得ている亡命キューバ人という図式は事実なのでしょうか。 

ちょっと意外でもある、ソフトなエンディングまで一気に読ませてくれる本書は、ミステリーとしても及第点です。

2008/5