りぼんの読書ノート

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楊令伝3(北方謙三)

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『北方水滸伝』の続編ですが、水滸伝に集った英雄豪傑の残党や宋政府の要人たちなど架空の人物に加えて、「金」を立国した女真族完顔阿骨打や、後に南宋の悲劇の名将と謳われることになる岳飛少年など、虚実が入り混じって物語が進行していきます。

第3巻では、大きな出来事がいくつか起こりました。史実に即した部分では、金と宋との「海上の盟」に基づいて、両国による遼の挟撃が開始されたこと。幻王こと楊令に率いられた金軍は、次々に遼の城市を陥落させ、残るは燕京(現在の北京)のみ。ここは宋が攻めることになっているのです。

フィクション部分では、江南で大規模に発生した方臘の宗教反乱によって、長江以南は独立国家のようになっていきます。かつての梁山泊の軍師であった呉用は、身分を隠して方臘に付き従いますが、信徒の生命を省みない作戦を眼にして、宋との戦いの形について悩まざるを得ません。ある意味ではこちらのほうが徹底した戦闘とも言えるのですし、梁山泊の「志」による革命と、「宗教」による革命とどこが違うのか・・。

南北の動乱を前にして、宋は二正面作戦を採らざるを得ません。宮廷に渦巻く陰謀の結果、最強の童貫元帥は南方の方臘の鎮圧に向かうこととなり、北方には腹心の趙安軍を差し向けるのですが、遼に奪われた燕雲十六州の回復が簡単にはいかなかったことは史実が証明しています。

そんな中で、ついに楊令を首領にいただいて、梁山泊の旗が再び上がります。中国全土を舞台とした宋朝末期の壮大な物語が、いよいよ動き始めました。

2008/2