りぼんの読書ノート

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楊家将(北方謙三)

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水滸伝楊令伝の原点は、ここにあったのですね。宋帝国が建国された時代の英雄・楊業とその一族を描いた歴史ロマンです。

北漢軍閥だった楊家は、信を置けない北漢皇帝を見限って、北進する宋に帰順。ここに宋の中原制圧は成るのですが、燕雲十六州の回復を狙う宋と、南下を狙う遼との決戦が迫ります。宋の北辺にある楊家は、最前線に立たざるを得ません。

騎兵戦を得意とする遼随一の名将で「白き狼」の異名を持つ耶律休哥が迫り来る中、宋において新参者の楊業は、宋軍生え抜きの将軍や文官たちの支援を得られずに、孤立無援の戦いを余儀なくされるのですが・・。

武人としての一徹な生き方にこだわる楊業と、それぞれタイプは異なるもののいずれ劣らぬ武将に育った7人の息子たちの行き方が、読者の共感を呼びます。『水滸伝』や『楊令伝』に登場する人物たちの原型は、既に本書の中に登場しているのです。

悲運の武将・楊業の伝説は、中国で「楊家将演義」として物語化されましたが、残念ながら原点の出来が悪く、京劇の演目として部分的に用いられる位置付けだそうです。ただ人気はあるようで、『水滸伝』の青面獣楊志は、楊業の子孫。北方さんが楊令という人物を生み出した秘密は、ここにありました。続編の血涙も必読でしょう。

2011/2