りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

さよなら僕の夏(レイ・ブラッドベリ)

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『たんぽぽのお酒』から55年たって出版された「続編」です。とはいっても、本書の部分も『タンポポのお酒』と同時に書かれていたそうですから、著者の中で続編として出版するとの気持ちが熟成されるのに、それだけの時間を要したということなのでしょう。

不思議なひと夏の出来事をタンポポワインの瓶に詰め込んだ12歳の夏休みから1年後、ダグラス君は子供たちの軍団を率いて、老人たちの軍団と戦争をはじめてしまいます。「一度も子供だったことのない老人たち」は、まるで「エイリアン」のようで、互いに理解しあえる相手ではなく、子供たちを支配する存在に思えたんですね。

ガキ軍団は、老人たちが子供たちをあやつるチェスの駒を奪取したり、少年たちの未来を管理して生命と時間を告げる、時計台の大時計を爆破したりします。でも、何も変わりませんでした。

成長して老いていく生命の不思議さをちょっとだけ理解したダグラス君が、車椅子のクォーターメイン老人にケーキを差し出すことによって、戦争は終わります。老人は、その時に自らの敗北を悟るのですが、どちらも勝利者なのでしょう。少年は老人の中に未来の自分を見つけ、老人は少年の中に自分自身を再発見するのです。

楽しい夏休みが終わってしまっても、その後でやってくるのは寒くて暗い季節だけではありませんものね。

2008/2