りぼんの読書ノート

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MM9(山本弘)

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ウルトラマンシリーズ」に夢中になったことがある人には、たまらない本ですね。地震、台風などと同じく自然災害の一種として「怪獣災害」が存在する「現代」で、日本を襲う多彩な怪獣たちと戦う気象庁特異生物対策部、通称「気特対」の物語!(ウルトラマンに登場するのは科学特捜隊、通称「カトクタイ」^^)

タイトルの「MM」とは「モンスターマグニチュード」であり、その最大級が「9」。「MM9」ともなると、黙示録的というか神話的というか、そんなレベルなのです。

1話から4話までは、ウルトラマンクラスの怪獣も登場せず、もっぱらこの世界の理解のためという感じですが、これらは全部、最終章の第5話への布石でした。ここで物語は一気に膨らみます。そして、この世界がどういう世界だったのか、すべて明らかになる仕掛けだったんですね。

そういえば、10数年前の神戸・淡路の大怪獣被害とか、宗教団体が地下鉄に怪獣を放した無差別テロとか、さらには近代最悪の怪獣災害が1923年に起きていたとか(関東大震災の年ですね)、この世界を理解するための布石はあったのです。

この世界を説明するために「特異人間原理」というものが登場します。本来、人間が物理法則や原子や電子や量子やビッグバンなどを「発見」するまでは、そのようなものは宇宙に存在しなかった!・・ということなので、怪獣の存在も、質量保存などのややこしい法則に縛られてはいなかったんですね。

この世界でも科学の諸理論が優勢になってきたけど、まだ全ての人がそれを信じる最終段階に達していないから、まだ怪獣は存在する余地がある。でもそれも時間の問題で、最終段階ではもはや怪獣などは存在しえず、過去の歴史も「合理的な」ものに変わってしまうというのですから、ものすごい「とんでも科学」!

その世界では、怪獣と同様に「気特対」も存在できません。でも彼らは言います。「私たちが怪獣災害を減らす分、別の世界での災害も減るのなら、やりがいありますね」って。そして「その世界では『気特対』はカッコいいフィクションになってるかもしれないな」って。ウルトラマンはヒメだったのか・・。

2008/2/3読了