りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ガラム・マサラ(ラーフル・ライナ)

インドのデリーに生まれ育ち、現在はイギリスとインドの2拠点でビジネスや教師をしている著者のデビュー作です。『ぼくと1ルピーの神様(ヴィカス・スワラップ)』を彷彿とさせる、スラム街に生まれた少年が成功者として成りあがっていくジェットコースターストーリーですが、こちらはもっとワイルドで犯罪も絡んできます。

 

生まれた瞬間に母を失い、暴力的なチャイ売りの父親にスラム街で育てられたラメッシュに教育を施したのは、白人修道女のクレアでした。やがてラメッシュは大学の全国共通試験で上位の成績を得るほどの学力を身に着けるのですが、クレアの病と死によって再び暗転。彼は富裕層のバカ息子たちのために替え玉受験を専門とする「教育コンサルタント」となったのです。

 

そんな生活が再び一変したのは、建設業者の息子ルディの替え玉として全国トップの成績をあげてしまったから。「インド最高の天才少年」としてメディアからもてはやされ、「ミリオネア」と「東大王」を足したようなTV番組のメインキャストとなったルディですが、彼にはもちろんそんな役割はこなせません。ラメッシュはルディのマネージャーとなって手取り足取り指導し続けるのですが、受験不正がバレたら破滅しかありません。しかし物語の展開は彼の予想や不安をはるかに超えていくのです。ルディを妬むTVプロデューサーが裏社会とのコネクションを持つ大富豪と結託してルディを誘拐し、さらに報復誘拐も発生。中央捜査局まで絡む大事件へと発展していくのですが・・。

 

カースト制や宗教も絡むインドの格差社会は複雑ですね。ラメッシュは事件の合間に恋に落ちてしまうのですが、全カーストに共通する女性の地位の低さも絡んで、そちらも一筋縄ではいきません。最終的にはラメッシュは外国へと旅立ちます。「インドに愛されるには、インドを離れる必要があった」のです。

 

2024/3