りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

メゲるときも、すこやかなるときも(堀川アサコ)

「幻想シリーズ」をはじめとする不思議な物語を得意としてきた著者ですが、最近は不思議を封印した作品も多いようです。ジャンルもの作家から脱却しつつあるのでしょうか。

 

新型コロナ蔓延による緊急事態宣言が発令された日、乃亜は夫のユキオに失踪されてしいまいました。金満な一族の箱入り娘として育てられ、家族の反対を押し切って結婚したユキオからも大切にされてきた乃亜にとっては寝耳の水。ユキオがオーナー店長をしていた食堂を訪ねたところ、ずっと経営不審だったことはわかったのですが、訪ね先の手掛かりはありませんでした。占師からは「すでにこの世の人ではない」と言われたり、ユキオの身辺調査をしたという実家からは「ほかに女がいる」と言われたりしたものの、乃亜は諦めきれません。彼女はひとりで食堂の再建をしつつ、ユキオの帰りを待つことにしたのですが・・。

 

なんとも緩い話でした。もともと金持ちの箱入り娘だった乃亜は、手持ちの現金が減ってきても、食堂の再建資金が必要になっても、実家からの支援で乗り切れてしまうのです。しかしそんな緩さと人の良さが、彼女を救うことになるようです。休業中の地下バーで働いていた腕のいい料理氏の小倉さんや、元スタッフだったという美人で明るい民さんや、謎のホームレスであるケンダマさんや、ずっと乃亜に惚れている従兄の真司らの協力を得て、食堂経営は軌道に乗り始めるのですが・・。

 

ユキオが失踪した原因や、ストーカーらしき女の影や、近所を荒らしまくる泥棒騒動などの問題も、終盤になって一気に片付いていく都合のいい物語ですが、こういう緩さもいいですね。ちょっとしたオープンエンディングにもなっていますが、もちろん結末は予想できます。普通が一番!

 

2024/1