りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

かげゑ歌麿(高橋克彦)

浮世絵研究の第一人者である牧野健太郎氏の『浮世絵の解剖図鑑』を読み、講演も聞いたところで、浮世絵関係の作品を読みたくなりました。牧野氏に歌麿は滅法いい男だったとのことですが、本書ではそれに加えて剣の遣い手でもあったとされています。そのあたりの事情は前作の『だましゑ歌麿』にあるのでしょうが、未読です、シリーズと知らずに読んでしまいました。

 

「さやゑ歌麿

「さや絵」とは漆塗りの刀の鞘を鏡の代わりに用いて眺める絵とのこと。鞘は細い楕円の形状なので、元絵を歪めて描く必要があるのです、歌麿がモデルにした女性が次々と殺害される事件を追って、歌麿と懇意にしている北町奉行所筆頭与力の仙波一之進、元歌舞伎役者で料亭主人の蘭陽、そこに匿われている平賀源内、後に北斎となる駆け出し画家の春郎らが活躍します。さや絵のように意味不明だった事件の鍵はどこにあるのでしょう。また盗賊の葵小僧が将軍のご落胤との噂は真実なのでしょうか。

 

「かげゑ歌麿

殺し屋・月影を追う仙波一之進が犯罪現場で見つけたのは、記憶を失った少女でした。平賀源内のエレキテルで治療された娘ゆうが思い出したのは「おとっつぁんは歌麿」だということ。身に覚えのある歌麿は娘を保護したものの、どうやらゆうは月影の一味と繋がっている様子。ゆうは本当に歌麿の娘なのでしょうか。一味に攫われたゆうを救い出すために、歌麿は指示された場所に乗り込むのですが・・。

 

「判じゑ歌麿

どうやら浮世絵を敵視する老中・松平定信の意を忖度する輩が歌麿を付け狙っているようです。箱根に籠った歌麿を訪ねて来た美女の問屋主人とは何者なのでしょう。前の事件の後で姿を消していたゆうは、判じ絵歌麿に危険を知らせるのですが・・。北斎の娘・お栄や、国芳の娘・芳鳥と芳女は有名ですが、歌麿の娘は実在したのかどうかもわかりません。本書では父譲りの絵描きの腕を持つ娘とされていますが、どうなのでしょう。

 

2024/1