りぼんの読書ノート

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ツインスター・サイクロン・ランナウェイ2(小川一水)

遠い未来。宇宙に進出した人類の中でもとりわけ辺境のガス惑星FBBで暮らす人々は周回者と呼ばれ、特殊な方法で生計を立てつつも古典的な風習を守り続けていました。巨大ロケットで巨大宇宙魚を捕獲する宇宙漁技術を編み出したものの、その船を操れるのは男女の夫婦に限ると定められていたのです。頑固な長老たちに叛旗を翻した女性ペアのテラとダイが、ガス惑星の深淵で太古の秘密に触れるのですが・・というのが第1巻の概要だったかと思います。

 

そしてまさかの続編が本書。ガス惑星の深淵から脱出したテラとダイは互いを想い合うようになり、このまま星系脱出かとおもいきや、ダイが故郷の権力者であるゲンドー氏に誘拐されてしまいます。愛する人を取り戻すため、テラは宇宙を駆ける潜入計画を開始。実はゲンド―氏の族長は不埒なことを企んでいそうとのことで、監視団から注目されていたのです。それは玉手箱と呼ばれる禁断の機器を用いて、汎銀河往来圏への復帰を果たすこと。実は周回者たちは、かつて銀河から追放された者たちだったのですね。

 

確かに、全質量可換粘土で造られた浮遊漁船を脳波投射で変形させるデコンパ能力なんて不思議過ぎて、一般人からは忌み嫌われそうです。ただしFBBに特有の全質量可換粘土が汎銀河往来圏に流出し、無制御状態に陥っているとなれば話は別。しかし非人道的で復讐的なゲンドー氏長老の目論見など許すわけにはいきません。他氏族の監視団と組んでそれを阻止したテラとダイは、第3巻で銀河の文明圏に乗り込んでいくことになりそうです。

 

まさかこの作品がシリーズ化されるとは思いませんでした。著者はかなり楽しんで書いていますね。オーロラを利用して高度千kmの電磁層まで駆け昇る質量2万トンの「ニシキゴイ」を網にかける漁なんて、常識の斜め上すぎます。もっともSF作家に常識を求めるなんて、形容矛盾も甚だしいのですが。

 

2024/1