りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ツインスター・サイクロン・ランナウェイ3(小川一水)

人類が星々へと拡散した遠未来。女性同士の恋愛が許されない故郷の巨大ガス惑星を飛び出した2人の少女は銀河の文明圏を目指します。厳密には密航状態の2人が予想外のトラブルや生活の課題に次々と見舞われるのは当然として、安住の地を目指すテラとどこまでも飛び続けたいダイオードの関係も微妙な隙間が生まれそうなのは気がかりな点。

 

全質量可換粘土を脳波投射で操るテラのデコンプ能力は、300年前に祖先一族が辺境に追いやられる原因となった違法なものですが、広大な銀河ですから防軍の監視もユルユルな状態。2人は愛船インソムニア号を駆って、銀河の各地に広がって猛威を振るいつつある粘土の除去作業で生計を立てながら、汎銀河往来圏の主星へと向かいます。そこで衝撃の事実が明らかになると知らずに・・。

 

300年の時を超えて蘇るエダとマギリ。なぜか致命傷から回復してしまうテラとダイオード。彼女たちは普通の人類ではないのでしょうか。そして全質量可換粘土の本質とは、いったい何なのでしょう。神話時代に遡る人類と非人類宇宙種族との戦闘とはどのようんに決着していたのでしょう。そもそも人類は超光速移動技術を使いこなしているものの、その原理すら理解できていないのです。

 

銀河の辺境で旧い因習に縛られつつ宇宙漁撈で生計を立てている氏族たちの物語は、とんでもないところに行き着いてしまいました。さすが全SFのエッセンスを詰め込んだ『天冥の標10部作』の著者の作品ですね。テラとダイオードの子作りエピソードで終わらせるとは、やはり楽しんで書いた作品だとは思うのですが。

 

2024/1