りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

帝都上野のトリックスタア(徳永圭)

この著者の作品を読むのは、「配達」という行為を通じて人々の心の繋がりを描いた『片桐酒店の副業』に次いで2冊めです。こちらは大正時代の帝都東京に暗躍する元詐欺師たちの痛快な冒険活劇であり、かなり異なる雰囲気の作品です。

 

突然姿を消した最愛の姉を捜して、多摩の農村から都会に出てきた17歳の少年・小野寺勇は、「脳める人々を救う裏社会の掃除人がいるらしい」との噂を追って、妖しく人を魅了するハーフの紳士、若槻ウィリアム誠一郎にたどり着きます。勇はウィルと彼の不思議な仲間たちに姉の捜索を依頼するのですが、実は双方とも隠れた意図を秘めていたのです。そして事態は、帝都を揺るがす大騒動へと発展していくのですが・・。

 

大正時代が舞台であることでかなり暴力的な手段も取られるのですが、彼らが対峙する相手は権力とも癒着した妖しい宗教団体であり、現代にも共通するテーマであるといえるでしょう。なぜウィルは少年の姉の捜索などという小さな依頼を受けたのか。少年の姉は宗教団体とどう関わっているのか。そもそも少年はなぜウィルと出会うことができたのか。敵や味方が騙し騙され、巧みな変装術や最先端の技術を用いた小道具なども登場するアクションは、まるで「ミッション・インポッシブル」のようです。

 

2023/12