りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

あなたの教室(レティシア・コロンバニ)

運命に抗って自分の意思を貫くために勇気を振り絞る、3大陸の3人の女性の物語が交差する『三つ編み』の使命篇ともいえる作品です。一人娘に教育を受けさせるために南部を目指してインド縦断の旅に出た不可触民の女性スミタの「その後」が、本書に関わってくるのです。

 

主人公はフランス人のレナ。不慮の出来事によって生きる意義を失い、20年勤めた中学校教師の職を辞してインドにやってきたレナは、海辺の村で鬱々とすごしているうちに波にさらわれてしまいます。浜で凧揚げをしていた少女ラリータと、護身術のトレーニングをしていた「レッド・ブリゲード」の女性たちによって救助されたレナは、彼女たちが不可触民で教育を受ける機会も持てないことに気付きます。彼女たちに英語を教えるために始めた個人レッスンはやがて、学校創設のプロジェクトへと変わっていくのです。

 

暴力的な男性と闘うために「レッド・ブリゲード」の支部長となったプリーティは、知識こそが力だと信じる平和主義者のレナに歩み寄りますが、それははじめの一歩にすぎません。学校開設のための障害は、お金や手続きやビザだけではなく、児童労働を必要とする貧困であり、女性教育の必要性を認めない社会通念であり、児童婚を強いる風習なのです。彼女たちの闘いは負け戦なのでしょうか。

 

著者は「インド女性が置かれた状況を西洋人が書くことの正当性」と問われた際に、「ひとりの人間、母親として過酷な事実を告発しているのであり、文化の違いなどと言っていられない」と答えています。たとえ夢物語的な個所があろうとも、本書は未来への願いを込めて綴られた、女性たちの連帯の物語なのです。

 

2023/12