りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

わたしは女の子だから(角田光代/訳)

「プラン」という国際NGO団体があります。その目的は「子どもの権利が守られ、女の子が差別されない公正な社会を実現する」ことなのですが、2000年以上も変わらなかった習慣を、変えていくことは可能なのでしょうか。「プラン」から依頼を受けて開発途上国を訪れた作家たちが綴ったアンソロジーである本書は、何かを動かす力になるのでしょうか。

 

「私も女(の子)だからこそ-まえがきにかえて(角田光代)」

2009年に訪れたマリで女性器切除の習慣に衝撃を受けた著者は、2年後にインド南部の「売春婦カースト」の女性たちが暮らす村を訪れます。彼女たちや娘たちが「悪循環からどのように抜け出せばいいいのかわからない」ものの、彼女たちの怒りは変革への第1歩なのでしょうか。

 

「道の歌(ジョアン・ハリス)」

トーゴを訪れた『ショコラ』の著者は、その地の女の子たちと強い絆を結んだようです。彼女は学校へと向かう道へと向かう少女の姿を力強く描き出しました。隣国ナイジェリアの人買いの手に弟たちを委ねた母が、息子たちにより良い人生を与えたという偽りの希望にすがっていることに、少女は気付いているのです。

 

「彼女の夢(ティム・ブッチャー)」

戦争によって心に深い傷を負った少女たちをリベリアとシェラレオネで取材したジャーナリストは、彼女たちが平和になった今もなおダメージをダメージを受け続けている現実を描き出します。彼女たちが、「アフリカでは年長者がいちばんよくわかっている」という現状維持のための呪文に立ち向かうことは可能なのでしょうか。

 

「店を運ぶ女(デボラ・モガー)」

著者がガーナの少女たちから聞き出したいくつもの物語から紡ぎあげたフィクションには、希望と絶望が詰まっています。善人の夫を持ち、頭の上に乗せた木箱に美容品を詰めて売り歩く女性の心を乱したのは、心無い噂なのでしょうか。それとも勉強好きでしっかりしていた長女を襲った運命なのでしょうか。

 

「卵巣ルーレット(キャシー・レッド)」

ブラジル北部の貧しい地域の女性たちは、皆同じ哀しい物語を持っていました。児童買春、十代の妊娠、HIV、無避妊、闇堕胎、売春ツアー、シングルマザー、横暴で責任能力のない男、父親の不在、家庭内暴力・・。男たちの暴力を放置する警察組織や、家父長制を説いて中絶を禁じるカトリック信仰は、プランにとっても巨大すぎる敵なのですが。

 

「あるカンボジア人の歌(グオ・シャオルー)」

映画監督でもある著者は、ジャングルに消えた娘の物語を作り上げました。森で見つけられたジャングル少女は、かつけクメール・ルージュの一員であった老警察官の娘なのでしょうか。彼女に人間性を取り戻させることは可能なのでしょうか。

 

「チェンジ(マリー・フィリップス)」

ドキュメンタリー制作者でもあった著者はウガンダを訪れて、性的虐待の責任が、虐待する側でなく、女の子たちに追わされていると知って愕然とします。そして有効な対策を打ち出せていないプランのことも非難するのです。プラン側からの誠実な返答も記されています。女性への偏見に満ちた社会で活動を続けることは、なんと困難なことなのでしょう。

 

「送金(アーヴィン・ウェルシュ)」

ドミニカを出てアメリカで教育を受けるという幸運を得た姉は、カレッジの講師となって故郷の母に送金を始めます。しかし母により多くのお金を送金していたのは、スペインで娼婦をしている妹のほうだったのです。母と娘、姉と妹の間に真の和解は訪れるのでしょうか。

 

2023/12