りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

五つ星をつけてよ(奥田亜希子)

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等身大の人物の日常の中には、いかに多くの思いが込められているのでしょうか。日常生活を包んでいるフィルターが剥ぎ取られた時に、人は何を思うのでしょう。この著者の作品を初めて読みましたが、観察眼の鋭い方ですね。 

 

「キャンディ・イン・ポケット」 

冴えない女子高生が唯一楽しみにしていたのは、毎朝同じ電車に乗り合わせる憧れのクラスメートとの数分間の会話でした。卒業式の日に意を決して密かに憧心を伝えようとした少女は、彼女もまた2人の関係を大切にしていたことに気づかされます。 

 

「ジャムの果て」 

子供たちを育て上げた後に夫を亡くした老女の楽しみは、孫たちに手作りのジャムを作って送ることでした。しかし甘すぎるジャムは子供たちの口に合わないだけでなく、迷惑がられているようです。追い討ちをかけるように息子と娘から母への本心を聞かされた老女の哀しみが描かれます。 

 

「空に根ざして」 

空の光景をSMSに投稿し続ける青年は、かつて交際していた女性の花嫁姿をフェイスブックで見つけてしまいます。かつて2人で暮らしたアパートを訪れた青年が見つけたものとは何だったのでしょう。 

 

「五つ星をつけてよ」 

脳出血から回復したものの認知症の気がある母の世話をヘルパーに頼んでいる中年女性。しかし彼女はそのヘルパーの悪い噂を聞いてしまいます。その噂は真実なのでしょうか。そして彼女は、ネットの噂や評価に振り回される生活から解放されるのでしょうか。 

 

「ウォーター・アンダー・ザ・ブリッジ」 

大阪の大学でバンド活動をしている青年に惹かれた女子中学生は、彼に求めららるまま裸の写真を送ってしまいます。小遣いを貯めて新幹線に乗り、学園祭で演奏をする青年に逢った少女は、彼の本心を知ってあいまうのですが・・。 

 

「君に落ちる彗星」 

プロ野球選手と結婚した元アイドルの妻は、毎日作る娘への弁当をブログにアップしています。でも彼女はネットでディスられているのです。匿名掲示板を満たす誹謗中傷や差別意識に触れるたびに、「性悪説」という言葉が脳裏に浮かんできます。 

 

2019/11