第2巻『神秘の短剣』のラストでコールター夫人に連れ去れてしまったライラは、薬によって眠り続けています。なぜコールター夫人は、ライラの殺害という使命を直ちに実行しないのでしょうか。一方、「神秘の短剣」の使い手であるウィルは、創造主を名乗るオーソリティに闘いを挑んだアスリエル卿の依頼を拒んで、ライラの捜索に向かいます。
結局はライラを守り、彼女の無自覚の行動を助けることが、世界を変えることだったのですね。それを悟ったアスリエル卿と、自分の娘であるライラへの愛に目覚めたコールター夫人は、ついに行動をともにするのですが・・。映画「ライラの冒険」の続編は、ついに制作されませんでしたが、この2人はダニエル・クレイグとニコル・キッドマンによって演じられていたわけですから、クライマックスの場面になるところだったのでしょう。
ただし小説の展開は、かなりあっけないのです。結局「第2のイブ」となるべき「運命の子」ライラが行った本当に重要なことは、「恋に落ちて、その後に永遠の別れを決断する」ということなのですから。ダスト学者のメアリーのいう「大河の流れを変えた小石」ということなのでしょうが、ライラは無自覚で使命感を持っていないので、なかなか盛り上がらないのです。
2016/6