りぼんの読書ノート

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ライラの冒険 3.琥珀の望遠鏡(フィリップ・プルマン)

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第2巻神秘の短剣のラストでコールター夫人に連れ去れてしまったライラは、薬によって眠り続けています。なぜコールター夫人は、ライラの殺害という使命を直ちに実行しないのでしょうか。一方、「神秘の短剣」の使い手であるウィルは、創造主を名乗るオーソリティに闘いを挑んだアスリエル卿の依頼を拒んで、ライラの捜索に向かいます。

結局はライラを守り、彼女の無自覚の行動を助けることが、世界を変えることだったのですね。それを悟ったアスリエル卿と、自分の娘であるライラへの愛に目覚めたコールター夫人は、ついに行動をともにするのですが・・。映画「ライラの冒険」の続編は、ついに制作されませんでしたが、この2人はダニエル・クレイグとニコル・キッドマンによって演じられていたわけですから、クライマックスの場面になるところだったのでしょう。

ただし小説の展開は、かなりあっけないのです。結局「第2のイブ」となるべき「運命の子」ライラが行った本当に重要なことは、「恋に落ちて、その後に永遠の別れを決断する」ということなのですから。ダスト学者のメアリーのいう「大河の流れを変えた小石」ということなのでしょうが、ライラは無自覚で使命感を持っていないので、なかなか盛り上がらないのです。

結局のところ、宗教色の濃い『指輪物語』や『ナルニア国物語』にも、宗教色の薄い『ゲド戦記』や『ハリー・ポッター』にも及ばないファンタジーだったのではないか、というのが感想です。

2016/6