1.アーダの空間(シャロン・ドデュア・オトゥ)
15世紀のアフリカ西海岸の村で幼児を失って悲嘆に暮れる母。19世紀のロンドンでディケンズと逢瀬を重ねる伯爵夫人。1945年のポーランドで強制収容所の慰安婦となった女性。そして現代のベルリンで差別に苦しむ大学生。アーダの名を持つ4人の女性たちの生と死が500年の時空を超えてループする、不思議な小説です。、著者の分身であろう最後のアーダは、男たちの暴力によって痛ましい死を迎える過去のアーダたちの輪廻から逃れ出ることができるのでしょうか。
2.三十の反撃(ソン・ウォンピョン)
ソウルオリンピックの年に生まれた女の子の名前で、一番人気だったのは「ジヘ(知恵)」だったそうです。平凡な人生を歩んできた末に独身の不正規労働者のまま30歳を迎えてしまったキム・ジヘは、理不尽な世界への期待をあきらめていました。しかし不思議な同僚との出会いが彼女を変えていきます。世の中には、悲しむべきことではなく、怒るべきことがいかに多いことか。彼女たちが始めたささやかな反撃は、簡単に潰されてしまうけれど、不条理に抵抗しなければ何も変わらないのです。
3.ベル・ジャー(シルヴィア・プラス)
早熟の詩人であった著者が1963年に30歳で自殺する直前に出版された、唯一の長編小説です。内容的にも、女子大在学中に自殺未遂事件を起こして、その後数カ月間精神病院に入院したという著者自身の体験をモチーフとしているため、スキャンダラスな注目を浴びたとのこと。しかし思春期の少女の自殺願望とそこからの脱出を真摯に綴った作品として、少女版『キャッチャー・イン・ザ・ライ』と称されるほどに真に迫った作品なのです。
【その他今月読んだ本】
・京都伏見のあやかし甘味帖 9(柏てん)
・聖女ジャンヌと悪魔ジル(ミシェル・トゥルニエ)
・メアリ・ヴェントゥーラと第九王国(シルヴィア・プラス)
・風にのってきたメアリー・ポピンズ(P・L・トラヴァース)
・時間のないホテル(ウィル・ワイルズ)
・リボルバー・リリー(長浦京)
・忍者に結婚は難しい(横関大)
・京都伏見のあやかし甘味帖 10(柏てん)
・カザアナ(森絵都)
・晴明変生(森谷明子)
・ひゃっか!(今村翔吾)
・歌え、葬られぬ者たちよ、歌え(ジェスミン・ウォード)
・花宴(あさのあつこ)
・火喰鳥(今村翔吾)
・赤刃(長浦京)
・迷宮の月(安部龍太郎)
・とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢(ジョイス・キャロル・オーツ)
・口ひげを剃る男(エマニュエル・カレール)
・待ち合わせ(クリスチャン・オステール)
2023/11/30