りぼんの読書ノート

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京都伏見のあやかし甘味帖 10(柏てん)

前巻ラストで年下恋人の虎太郎が失踪。彼の故郷である丹後の地で何が起こったのでしょう。行方捜索にも行き詰ったれんげの前に突然現れたのは、木島神と陰陽師賀茂光栄でした。光栄は禍の予兆を読み取り、木島神は鬼の気配を感じたというのです。そして鬼に憑りつかれた虎太郎が禍の根源になっているとも。

 

丹後の鬼というと「大江山酒呑童子」が有名ですが、その前にも鬼伝説があるとのこと。古代日本で朝廷に従わない地方豪族たちも鬼と呼ばれた時代、大江山を拠点としていた3鬼が聖徳太子の弟である麻呂子親王に討伐されたというのです。大江山を訪れたれんげたち一行は、背中に羽を生やした少年カル、巨大な女性クマ、普通の中学生のようなテンコに出逢います。どうやら彼らは長い間封じられていた鬼らしいのですが、仲間思いで無害の様子。では虎太郎に憑りついた鬼とは、いったい何者なのでしょう。

 

まつろわぬ神の集合体である大国主神の一面が、可愛らしい蚕姿の木島神であったこと。大国主神の盟友である神少彦名神もまた、さまざまな姿で現れること。丹後に残る天女伝説と、竹野神社の斎宮であった虎太郎の祖母の関係。大和朝廷と葛城一族の間に横たわる怨念。さらには聖徳太子と麻呂子親王の兄弟の間にあった深い溝。あまりに盛りだくさんな内容ですが、要するに虎太郎に対するれんげの愛が勝利したということなのでしょう。このシリーズも終わりが近いのかもしれません。

 

2023/11