りぼんの読書ノート

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京都伏見のあやかし甘味帖 7(柏てん)

30歳を前にして仕事も婚約者も失い、京都伏見で人生休憩中だった小薄れんげ。民泊の家主であった8歳年下の虎太郎と、晴れて恋人同士という関係になったものの、まだ気持ちも暮らしも落ち着きません。大学卒業を控えた虎太郎はデパートの甘味バイヤーを目指して就職活動中ですが苦戦中。不動産屋に就職したれんげは、どうやら「訳あり物件担当」らしく、古い京町家に取り憑く化け物の調査を依頼されてしまいます。実は彼女は、伏見の神狐と人間とのハーフの末裔であり、生まれたての神使である子狐クロになつかれているのです。

 

しかし今回の相手は本気でヤバイ存在でした。会って早々に首を絞められて蛇紋の痣が残ってしまったほど。京町屋にあった祠の神が「三宮様」と呼ばれていたこと、その祠は比叡山の僧兵らによる強訴の神輿が打ち捨てられた場所に建てられたことなどを聞き出し、関係のありそうな日吉神社へ向かったものの、大した収穫はなし。唯一の手掛かりは「あこがめをほり」と謎の言葉を残して消えた女神を垣間見ただけ。困り果てて馴染みの晴明神社を訪ねたれんげは、そこで、日吉神社に祀られる三宮様こと鴨玉衣比売神と、上賀茂神社の主神である賀茂別雷大神が母子関係にあることに気付かされるのですが・・。

 

陰陽師安倍晴明は、師であった賀茂忠行・保憲父子と深い因縁があったのですね。安倍晴明の母とされる葛の葉がキツネであり、賀茂神の神使が八咫烏であることも、両家の仲が悪い原因のようです。れんげは1000年に渡る母神の執念を解くことができるのでしょうか。

 

れんげが垣間見る神々の世界と、無類の甘党である虎太郎の京都甘味所巡りのアンマッチが楽しい作品です。成長しつつあるとはいえ、まだまだ頼りない神使である子狐のクロが2つの世界を繋いでくれています。まだまだ落ち着かないれんげと虎太郎の物語は、もう少し続いていきそうです。

 

2022/11