りぼんの読書ノート

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京都伏見のあやかし甘味帖 5(柏てん)

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仕事も恋も失って京都で人生休憩中だった小薄れんげの前で、次々と異変が起こったことには理由があったのです。神使という子狐のクロと出会ったのも、神格化された怖い母狐の白菊や兄狐の黒烏に脅されたのも、陰陽師義経や弁慶の霊と関わってしまったのも、れんげが伏見の主である神狐・小薄が人間との間に生したハーフの末裔だったことが原因だったのです。そして今、神狐・小薄が目覚めようとしているのです。

 

ともに危機を乗り越えて深く結びついたれんげとクロでしたが、前巻のラストでクロは姿を消してしまいました。、れんげの力を奪って使ってしまったクロは己の非力を恥じて、修業のために根の国へと向かってしまったのです。しかもその修業は百年も千年もかかる可能性があるというのです。クロは人間の寿命が短い今年知らないのですね。

 

シリーズ第5巻となる本書では、クロを呼び戻そうとするれんげの冒険が描かれます。黒烏の助言で訪れた八坂神社では牛頭大王から難問を出され、ようやく戻ってきた伏見は異界と化していました。復活した宇迦之御霊大神を名乗っていた神は神狐・小薄ではなく、異教の邪神だったのです。さまざまな神仏が習合されてきた日本の神はさまざまな側面や魂を持っているのですね。牛頭大王だってスサノオの一面を持っているし、そもそもキツネに関わる神や悪霊も多いのです。はたしてれんげは無事にクロと再会できるのでしょうか。

 

この巻では、一回り年下ながられんげに恋してしまった和菓子好きの虎太郎の影が薄いのですが、最後には活躍しますのでが安心してください。しかし東京から伏見に栄転してきたという、小娘白狐の天音の正体には驚かされました。このシリーズは人気があるのですね。着々と続巻が発行されているのは喜ばしい限りです。

 

2021/1