りぼんの読書ノート

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京都伏見のあやかし甘味帖 9(柏てん)

粟田口不動産で働くのにも慣れてきたれんげは、またも神様たちの厄介事に巻き込まれてしまいます。きっかけは、村田の旧友である西陣織師の詠美から、祖母の死後行方不明となった愛猫あんこを探し出すよう依頼されたことでした。しかし詠美が知っているだけでも30年以上、あるいは祖母が子供だった頃から飼われていたような猫など、どう考えてもただ者ではありません。

 

なぜか別身の愛神の姿で現れた伏見稲荷の白菊命婦がれんげらを連れて来たのは、旧糺の森の一画にある蚕ノ社でした。どうやらそこの祭神であるという蚕姿の木島神も、金色という名の猫を探している様子。記憶が朧になっている木島神が思い出した地名は、珍しい狛猫に護られているという京丹後の金刀比羅神社。恋人の虎太郎の運転で、村田や詠美とともに丹後へ向かった一行は、金色やあんこを探し出すことができるのでしょうか。

 

そもそものきっかけは、蚕を守るために分霊されたお守りの石を、詠美の祖母が持ち帰ってしまったことだったようです。しかも猫姿になったあんこを愛してしまったがゆえに、自分と孫娘の元に縛り付けてしまったのです。あんこは荒ぶる神に変身する前に自ら姿を消したのですね。神との約束は破ってはいけないものなのです。一方で京丹後は虎太郎の故郷でもありました。亡き家族の墓参りに出た虎太郎の様子がおかしいのですが。このことは次巻に続いていくようです。

 

京都の神社仏閣は奥が深いですね。蚕ノ社に珍しい三本柱の鳥居があるとか、旧糺の森があるとか、全く知りませんでした、もちろん京丹後の神社に祀られている神々のことも。そして相変わらず、甘党の虎太郎が眼をつける京甘味のおいしそうなこと。次巻では幕間の「虎太郎の甘味日記」はどうなってしまうのかも気になります。

 

2023/11