りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2023/10 Best 3

1.ひとりの双子(ブリット・ベネット)

アメリカで先祖に黒人を持つ者は、白人のような見かけであっても「黒人」と見なされてしまいます。そんな者たちが白人になりすます「パッシング」を題材とした作品です。矛盾に満ちた混血者たちの町から逃亡した後、漆黒の肌を持つ娘を連れて戻ってきた姉と、消息を絶ったまま偽りの人生をおくる双子の妹の再会は、どのよううな形をとるのでしょう。彼女たちの人生はカラーラインに分断されてしまうのでしょうか。分断に揺れるアメリカを救うのは、日本人が優れている「忘却能力」ではないかと思うのですが・・。

 

2.火星へ(メアリ・ロビネット・コワル)

1952年に巨大隕石が落下したことで存亡の危機を認識した人類が、本格的な宇宙進出を目指したという歴史改変SFシリーズの第2部にあたります。第1部『宇宙(そら)へ』で、一介の計算士から初の宇宙飛行士の一員となって月へと向かった「レディ・アストロノート」エルマは、第1次火星探検隊のメンバーに選出されるのですが・・。女性に対する偏見も人種差別意識も根強い時代に、宇宙という新しい舞台で活躍する女性たちの姿が魅力的な作品ですが、宇宙で起こるさまざまな不測の事態への対応もデテイルまでリアルに描かれているのです。

 

3.機械仕掛けの太陽(知念実希人

まだ記憶に新しい「人類と新型コロナウィルスとの戦い」における2020年初頭から2022年6月までの2年半の日々を題材にした小説です。3人の視点人物はいずれも使命感を抱く医療従事者ですが、彼らも自身や家族への感染を恐れる普通の人間です。終わりが見えない戦いに疲れ果て、混迷する政策に戸惑い、不安から生まれる差別に苦しみ、それでも戦場に立ち続けた者たちの物語はドラマチックです。そしてやはりこの戦いの当事者である読者にも、当時の出来事や思いをまざまざと思い出させてくれるのです。

 

【別格】

二十四の瞳壷井栄

 

【その他今月読んだ本】

アホウドリの迷信(岸本佐知子柴田元幸/編訳)

・夜の語り部(ラフィク・シャミ)

・別れの色彩(ベルンハルト・シュリンク

・女人入眼(永井紗耶子)

・ハイ・フィデリティ(ニック・ホーンビィ

・ブック・オブ・ダスト1.美しき野生(フィリップ・プルマン

・福を届けよ(永井紗耶子)

・吹上奇譚1 ミミとこだち(吉本ばなな

・吹上奇譚2 どんぶり(吉本ばなな

・吹上奇譚3 ざしきわらし吉本ばなな

・吹上奇譚4 ミモザ吉本ばなな

・9歳の人生 (ウィ・ギチョル)

・裸の大地 第1部 狩りと漂泊(角幡唯介

・夜が明ける(西加奈子

・クルーゾー(ルッツ・ザイラー)

・マイ・リトル・ヒーロー(冲方丁

・さよならの儀式(宮部みゆき

・フローリングのお手入れ法(ウィル・ワイルズ

・愚かな薔薇(恩田陸

ダッハウの仕立て師(メアリー・チェンバレン)

・奇跡の大地(ヤア・ジャシ)

 

2023/10/31