りぼんの読書ノート

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ソフロニア嬢、倫敦で恋に陥落する(ゲイル・キャリガー)

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吸血鬼や人狼が貴族扱いされ、メカ使用人がお屋敷で働くヴィクトリア朝英国。「ホラー」と「スチームパンク」が同居する独特の世界観に基づいて綴られた「英国空中学園譚シリーズ」の最終巻です。

レディのための花嫁学校と間違われて、飛行船内に寄宿するスパイ養成学校に入れられてしまった、ソフロニア嬢も既に最上級生。貴族との結婚を隠れ蓑にしてスパイ活動を続けるのが一般的な進路のようですが、身分違いの恋に悩むソフロニア嬢の場合は難しいですね。彼女が好意を抱いているのは、元・飛行船の釜焚き少年で、今は不死の人狼族となってしまったソープ君なのです。

最終巻では、異界族を敵視してメカによる英国支配を企んでいる、悪の組織・ピクルマンとの決戦が描かれます。ソフロニア嬢が舞踏会で入手した情報は信用されず、巨大飛行船である「空中学園」が、空賊と組んだピクルマンに奪われてしまいます。ソフロニア嬢とともに船内に残ったのは、自分の学園を純粋な花嫁学校と信じているジェラルディン校長と、頭のおかしい吸血鬼教授。はたして彼女たちは、ピクルマンの恐るべき陰謀を阻止することができるのでしょうか。

単なる上流階級の老婦人と思われていた校長の意外な姿や、友人アガサの意外な正体や、伝説の卒業生スパイのマダム・スペチュナの意外な最期や、邪悪な先輩モニカとの意外な共闘など、最終巻は「意外」のオンパレード。もちろんラストは、全てが綺麗に納まります。

後日談では、ソフロニアの次の任務が生まれたばかりのアレクシアの保護だとか、ソフロニアの姉が帽子のアイヴィの母になるとか、天才女性科学者のルフォーがイタリアに移住した理由とか、このシリーズが25年後よりもメカが進んでいたように思えた理由とか、「英国パラソル奇譚シリーズ」との意外なリンクもたっぷり。一番気に入ったのは、英国王室の犬好きの伝統はメカ犬のバンバースヌートから始まったというくだりです。

2017/7