りぼんの読書ノート

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忍者に結婚は難しい(横関大)

『ルパンの娘』と同様にTVドラマ化されましたが、基本形は同じですね。宿敵の一族の末裔が結婚してしまったがゆえに起こる大騒動。もし「ロミオとジュリエット」が結婚できていたとしても、両家のライバル関係は変わらなかったのでしょう。本書の宿敵関係は、現代も人知れず暗躍している伊賀と甲賀の忍者一族です。

 

主人公は甲賀一族の末裔である蛍。彼女が結婚したのは伊賀一族の下忍である草刈悟朗だったのですが、互いに素性を隠し通しているため相手が忍者とは知らないまま。それでも隠し事は問題を生むのでしょう。新婚当初のラブラブ気分は2年後にはすっかり消え去って、互いに離婚すら考え始めているほど。そんな時、伊賀系の大物政治家が暗殺されるという事件が起こります。政治家の護衛に当たっていた悟朗は、現場を去る不審者の後姿に向かって手裏剣を投げるのですが・・。

 

伊賀と甲賀の対比が面白いですね。徳川家に仕えた伊賀忍者が政権与党との関係を保ちながら郵便ネットワークを牛耳る大組織になっているのに対し、反権力志向の甲賀忍者は新兵器を活用する少数精鋭集団になっているのです。男尊女卑思想がはびこっている伊賀忍者の夫と、男女同権意識の強い甲賀忍者の妻がうまくいかないのも当然かもしれません。しかし最後の最後で、2人は互いに組織の掟を破って相手を助けてしまうのです。巨大な陰謀に翻弄されそうになりながら、2人の関係はどうなってしまうのでしょう。

 

ドラマは見ていませんが、妻の蛍を演じた菜々緒はイメージぴったりですね。夫の悟朗役の鈴木伸之という役者のことはよく知りませんが。ともあれTVドラマ向きのハラハラドキドキ・ジェットコースターストーリーです。もちろんハッピーエンドはお約束ですけれど。

 

2023/11