りぼんの読書ノート

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リボルバー・リリー(長浦京)

綾瀬はるかさんが主演する同名の映画を見てきました。とても面白かったものの、主人公の背景や登場人物たちの関係性の説明が最小限だったので、原作を読んでみました。結論は・・よく理解できたものの、映画と小説は別物と考えたほうが良さそうです。もちろんどちらも極上エンタメに仕上がっています。

 

リボルバー・リリー」の本名は小曽根百合。台湾のスパイ養成組織であった幣原機関で訓練を受け、16歳で実地任務に投入されるや3年間で57人の殺害に関与し、各国から「最も排除すべき日本人」と呼ばれた美しき諜報員。しかし彼女は20歳の時に突然活動を辞め、消息を絶ちました。それから10年、関東大震災から立ち直ろうとしていた大東京で、彼女は再び活動を開始するのです。

 

きっかけは、台湾時代から頼りにしていた老人が、秩父で一家惨殺事件を起こして自殺したとの新聞報道でした。ねぐらとしていた私娼街の玉ノ井を出て現地に向かった百合は、真の下手人は帝国陸軍であり、一家で唯一生き残った少年が、消えた陸軍資金の秘密を父親から託され、百合を頼りに逃走中であることに気付きます。なぜ自分が選ばれたのかを知らぬまま少年を保護した百合は、1000名の陸軍精鋭に加え、多数のやくざ組織、さらには百合に妄執を抱くスパイの残党を相手に死闘を繰り広げていくのでした。

 

原作も映画もド派手なノンストップアクションです。百合の強さと美しさが際立っていることは共通していますが、もちろん原作のほうが背景説明は丁寧です。ただし百合と少年の関係について一ひねり加えたことで、映画のほうが一本芯が通っているように思えます。視覚的な効果については言うまでもありません。本書は著者の2作めの長編だとのこと。新感覚アクションと呼ばれているのは、仕掛けの大きさからでしょうか。それとも男性社会に一石を投じたからでしょうか。面白いことは間違いないようなので、もう少し読んでみましょう。

 

2023/11