りぼんの読書ノート

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世界SF作家会議(早川書房編集部/編)

コロナ危機開始直後の2020年7月から2021年2月にかけて、全3回にわたって放送されたフジテレビの特番を書籍化したもの。第2回だけ見ましたが、SF作家らしい発想が随所に発揮されていました。喧々諤々の議論を聞きたかったのですが、そこはまぁ皆さんオトナですからね。各回のメンバー、論点、印象に残った発言を記しておきます。全3回を通じて司会はいとうせいこう氏、顧問は大森望氏です。

 

第1回「SF作家はコロナパンデミックをどうとらえたのか」

新井素子冲方丁、小川哲、藤井太洋、劉慈欣)

パンデミックはいつか来ると予想されていたが、SFでは人類滅亡に至る危機として描かれていた。

・政治家のマヌケな事態までは、SF作家の想像力は及ばなかった。

・コロナウィルスは、人類を理解しすぎていて、一番弱い所をついてきた。

・アフターコロナはない。

・SF小説だけが人類が未来で遭遇しえる予想外の出来事に真正面から向き合っている。

 

第2回「人類は●●で滅亡する」

新井素子、小川哲、高山羽根子藤井太洋、劉慈欣、ケン・リュウ、キム・チョヨプ)

・人類滅亡の原因でもっとも可能性が高いのは自然災厄であろう。

・文化的な豊かさが人類を滅ぼす。

・人類は「ポストヒューマン」によって滅亡に至る。

・人類が有する脆弱性である「愛」が人類を滅ぼすのではないか。

・種としての人類はしぶとく生き残り、滅亡しない。

 

第3回「100年後の世界は?」

新井素子冲方丁、陳楸帆、樋口恭介、劉慈欣、ケン・リュウ、キム・チョヨプ)

・人間と自然が調和へ向かっていて欲しい。

棄民政策としての「惑星開拓」が行われる。

サイバースペース化・デジタル化の進展。ただし貧富の差は激しくなる。

・身体的な改変は普通のことになっている。

・100年も待たずに、完全な監視社会となる。

・100年先は予測不可能。

・100年先はあまり変わっていない。

 

楽しい企画でした。とりわけ中国の2大SF作家である劉慈欣氏とケン・リュウ氏が参加してくれたのは素晴らしい。韓国の新進SF作家のキム・チョヨプさんの大胆な発言も印象に残りました。しかしなんといっても、大御所の新井素子さんのパワーが凄かった。「アフターコロナはない」、「人類は滅亡しない」、「100年先も変わっていない」と、討論テーマの前提を覆す破壊力を毎回発揮していたのですから。

 

2023/7