りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

睦月童(西條奈加)

江戸時代を舞台に東北の「座敷童伝説」をベースにして、想像力を縦横無尽に羽ばたかせた奇想ファンタジー作品です。本格時代小説作家として直木賞も受賞した著者ですが、ベースはファンタジーにあることを再確認させてもらいました。この作品の後にも「雨月物語」を下敷きとした『雨上がり月霞む夜』を書いていますし、定期的な原点回帰を期待したいものです。

 

物語は、放蕩息子・央介の悪行に手を焼いた日本橋の酒問屋の主人が、東北の村からひとりの少女を招いた場面から始まります。7歳ほどに見えるその少女・イオは、「人の罪を映す」という不思議な目を持っていたのです。幸い央介が実際に犯していた罪は軽く、激しい良心の呵責に襲われて更生できたのですが、2人はさらに不思議な事件に巻き込まれていくのでした。

 

やがてイオの目に動じない「悪魔」的な旗本が現れ、味方と思っていた侍はイオの故郷である「睦月神の里」を破壊することを目的としていたという、ファンタジーど真ん中の世界が展開していきます。月に帰った「かぐや姫」や不老不死の「八百比丘尼」まで関係してくる物語は、半村良筒井康隆レベルの面白さ。ジブリに映画化して欲しいくらい。なぜその侍は「神殺し」の悲願を抱いたのか。「睦月神」とは何者なのか。イオの運命はどうなるのか。未来への希望を感じさせるラストまで、ハラハラドキドキです。

 

2022/12