りぼんの読書ノート

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妖星伝 1 鬼道の巻(半村良)

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「伝奇小説」というジャンルにはじめて触れた作品かもしれません。懐かしくなって再読しました。

八代将軍・吉宗が退いた後の江戸期。日本史の裏側に潜み、いつの世も戦乱と血潮を求めてきた「鬼道衆」が妖しく蠢き出しま。長らく不在だった盟主「外道皇帝」が蘇った兆しを感知したというのです。折しも、鬼道十二門のうち散逸したと思われていた西面三門が反主流派として姿を現し、鬼道衆どうしの闘いも激しくなっていくのでした。

十二神将の名を持つ筆頭者に率いられた、皇居十二門の名を持つ超能力者集団」という発想も面白いし、日蓮宗不授不施派や、役小角や、補陀落伝説や、日本霊異記の伝承や、田沼意次や、絵島の絵馬や、宇宙人や、UFOなど、あらゆるものをゴッタ煮にして物語を紡いでいく剛腕ぶりにも感心したものです。

宮毘羅の日天に率いられる主流派と、因陀羅の信三郎に率いられる反主流派の闘争の裏では、紀州に秘密を探りに行った医者・桜井俊策、一揆侍・栗山定十郎、殺人鬼・石川光之介、はぐれ鬼道・お幾が、「赤目」や「カタリ」と遭遇。

何より驚いたのは、地球のことを「生命が生命を食って生きる醜い星」とする発想です。なぜ地球が「地獄」として歪んだ進化をさせられたのか。そのあたりはおいおい謎解きがされていくはずですので、一応最後まで再読してみましょう。実は本書の結末は成功しているとは言い難いのですが、途中のプロセスが楽しめるのです。

2016/5再読